CH-NMR-NP 天然物NMRデータベース


天然物の13C/1H-NMRデータベース CH-NMR-NP

13C and 1H NMR Database of Organic Natural Products


CH-NMR-NP は天然有機化合物のNMRスペクトルを収録したデータベースで、作成を始めたのは 2002年5月でした。 2014年8月に一応の区切りをつけて総点検を始めました。その間に29,500 件のデータを文献から収録しました。 SDBS-NMRからスペクトルパターンのある有機化合物約 6,000 件を加えて総数約 35,500 件の有機天然物と 一般有機化合物のNMRデータベースとしました。

NMRデータと化学情報は研究論文から集めました。Journalを限定して信頼性の高いデータ収録に心がけました。 主要なJournalは次の通りです。

  • Chem. Pharm. Bull.: (2000-2013)
  • J. Antibiotics: (2001-2013)
  • Tetrahedron, Tetrahedron Letters: (2000-2014春)
  • J. Natural Products: (2000-2014春)
  • Phytochemistry: (2000-2013) + Phytochem. Lett.: (2008-2013)
  • J. Org. Chem.: +Eur. J. Org. Chem.: (2000-2013)
  • Magn. Reson. Chem.: (1996-2013)
  • Organic Letters (1999-2014春)
  • その他のJournalから少数のデータを収録しています。

データベースへの収録にあたっては個々のNMRデータの信頼性に重点を置きました。 原則としてすべての炭素の化学シフト値が記述され、プロトンNMRの記述があることを収録の条件にしました。 化学構造が明確に記述されていることと、名前が与えられていることも重要な条件です。 化学構造だけで名前が与えられていない化合物は収録しませんでした。 類似した化学構造は厳選して収録しました。従って網羅性はありません。 記述は全て文献準拠です。立体構造などについて修正論文が発表されればデータベースも修正しました。

収録されている天然化合物中の炭素数の分布は、次のようになっています。

図1. 収録されている天然化合物中の炭素数の分布

CH-NMR-NPISIS/Base をデータベース管理システムとして構築しました。 そのために化学構造式の描画、分子式、分子量、モルファイルの作成などは ISIS/Base に準拠しています。

CH-NMR-NP に収録されている項目は次の通りです。

1. スペクトル帰属に対応した化学構造式

化学構造式は文献に対応していますが、スペクトル帰属のために、全ての炭素に番号をつけて描いてあります。 Acetyl, Benzyl, Glu などとされている部分構造も全て描きこんであります。 炭素番号は文献準拠ですが、データベース化する時に alpha、beta、1'、1'' などは使えませんので数字におき直してあります。 化学シフト値と 1:1 の対応を付けるために重複した数字は使っていません。等価な炭素に対しては数字表記してありません。

2. 13C NMRと1H NMRのスペクトルデータ情報

化学構造の示されている炭素の番号一つに対応して与えられている情報は次のとおりです。 13C シフト値、結合している水素数(CH3, CH2, CH, C)、1H シフト値、1H の分裂情報やOH, NH, NH2など情報、13C の帰属の交換可能性、等価の炭素数

3. 化合物情報

化合物名 論文記載の名称、化学名あるいは慣用名
ギリシャ文字や特殊文字は英数字に置き換え、上付き、矢印なども適時置き換えてあります。 正式な化学名のみが記載されている場合にはその化学名が記述されています。
分子式 化学構造式から作成
分子量 化学構造式から作成、文献記載の分子量と小数点1桁目で不一致のことがあります。 これは産地における元素の天然存在比の多様性に由来すると説明されています。
化合物特徴 著者が記述している化合物の特徴づけです。
化学名 正式な化合物名、文献に記述がある場合には記載。
CAS登録番号 CAS 登録番号
抽出の原料物 天然物の由来物質、抽出原料です。
多くの場合、学術名で与えられています。
抽出物に関するメモ 抽出原料についてのコメント

4. NMRスペクトル測定に関する情報

溶媒 溶媒と測定条件(温度、pH など)が記述してあります。
温度の記述がない場合は大多数が25-35℃の範囲、中性で測定してあると想定しています。
1H 周波数 (MHz) 1H NMRの観測周波数です。
個々のデータについて記載がない場合には Experimental に書いてある
最大の周波数を入力してあります。
シフト基準 シフトの基準値です。
溶媒のシグナルを用いている場合文献に記述がある場合にはデータベースにも記述しています。 例えば溶媒が CDCl3 の場合、7.25 / 77.0 とあれば、 1H NMR の CHCl3 のシグナルが 7.25 ppm、 13C NMR では CDCl3 のシフト値が 77.0 ppm としたと著者が言っていることを意味します。

5. その他

NP_No 化合物に与えられている番号
スペクトルキー スペクトル(13CNMRと1HNMR)に 1:1 で対応します。 複数の溶媒で測定したデータが与えられている時には、同一の化合物に複数のスペクトル・キーが与えられています。
出典 データの出典です。筆頭者のみの記述になっています。
コメント データベース作成者のコメントです。
スペクトル帰属について 帰属が明らかに入れ替わっている場合は修正しましたが、見落としがあるでしょう。

6. SDBS-NMRからの有機化合物

SDBS-NMRは実測スペクトルから作成され、スペクトルパターンのdigitalデータが存在します。 2000年末までに収録されたデータの使用権を産業技術研究所から取得して、約6,000件の有機化合物の13CNMRと1HNMRスペクトルパターンを含むDBを公開しています。 有機化合物の炭素数は1から48です。その約70%がC5からC15です。 1HNMR のほとんどが400MHzで測定されています。 スペクトルパターンの表示、拡大、Downloadが可能です。